N氏の策略〜おかわり星新一〜
N氏が偶然開発したのは、誰でも頭のよくなる薬だった。
小粒で飲みやすいカプセルタイプで、本当に誰でも頭が良くなるんだっていうから、それはもう、一部では大変な騒ぎが起きた。
しかしN氏は慎重で、それを大々的に広告などはしなかった。代わりに都会の外れ、手頃な学校に忍び込み、生徒にこんな噂を流した。「N氏が必ず頭がよくなる薬を開発した」
最初は鼻で笑っていた生徒も、冗談半分で薬をもらった10人ほどがテストで満点を取ったあたりから顔色が変わった。かれらは我先に薬を求めN氏は薬で大儲けをした。
一ヶ月すると教師が訝りだした。生徒が満点しかとらないのだ。そしてN氏の噂を知った。「N氏が必ず頭がよくなる薬を開発した」
最初は鼻で笑っていた数学の教師も、冗談半分で薬をもらった教師がテストで生徒達の満点を阻止したあたりから顔色が変わった。かれらは我先に薬を求めN氏は薬で大儲けをした。
三ヶ月すると、N氏は困ってしまった。
生徒と教師、どちらにも薬を与えてしまって、もう効果がないのだ。
しかも満点を取れなくなった生徒たちが研究室に次々やってくる。N氏はノイローゼになりそうだった。
そんなときN氏にこんな噂が飛び込んでくるのだ、「Y氏が誰でも頭が悪くなる薬を開発したらしい」
N氏は早速Y氏に連絡を取った「その薬をある学校の教師達に飲ませたいんだが」……