魔法少女論
『魔法少女と世界の危機』の初手がどこにあるのかはわからないが、日本人のなかにずっと根付いているものなのは確かだ。
個人的には魔法使いサリーからガチで考察して日本の『魔法少女の系譜』が如何に息の長いものであるか語りたいのだが簡単に済ませることにする。
魔法少女の母<東映魔女っ子シリーズ>
米国での「奥様は魔女」のヒットにより日本でも魔女っ子の誕生が急がれた、1966年から始まる魔女っ子シリーズである。魔法使いサリーや秘密のアッコちゃんは名前を知る平成人も多くいるはず。魔法少女にステッキや「少女」という媒体は、あらゆる作品に見られるコンテンツイメージとしてこのころには定着している。面白いことに、当初『魔法使いサリー』は少年アニメとして企画されていて、事実この作品はラブロマンスに加え少年が好むコメディ色が強く出ていた。男女問わずの人気はそういう理由もあるのだろう。
魔法少女の凱旋<セーラームーンシリーズ>
1992年から始まるセーラームーンは今なお世の女性の信仰の的である。皮肉くさい言い方になってしまうが、どうしても信仰というイメージが強い。
今までの「魔女っ子」とセーラームーンの圧倒的な違いは、「戦闘」と「女子の優位性」である。アジアや北米でもこのシリーズは放送され、女性の権利向上をうたったアニメとして知られている。
まず月野うさぎに高尚な心が一切ない。作者(竹内直子)(富樫仕事しろ)が女性なのも理由で、男子の目から見えるバイアスのかかった「女の子」とは訳の違う動きをするのである。敵が出たらピーピー泣き、タキシード仮面が現れた瞬間に泣き止み、そのくせ大した努力をせずいいところは全部持っていく、そして挙げ句の果てにはプリンセス。女性のワガママがあらゆる場所に現れる。放送された国でも賛否が分かれたらしい。つまり「女性はこんな現金ではない」と。まあ、知ったことではない。結局この作品は人気なのだから、そういうことである。個人的には女性一般論で話を進めたくないので、好きにすれば、という心境だ。セーラームーンが好きかと言われれば、男としては…うん…。よくできたアニメだと思うよ。うん。結局男だってサイヤ人だったり火影の息子だしね、うん。
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魔法少女の正統後継者<カードキャプターさくら>
私たち平成初期組はこれをみてヲタクになった。死のデッキ破壊ウイルスよろしく、幼きのこれが感染元となって人々をヲタクに染め上げたといっても過言ではあるまい。NHKではリメイクが決まっており期待が高まる。何も外さない、現代の魔法少女の集大成のような傑作である。CLAMPもそれを望んでこのストーリーを編んだとしか思えない。CLAMPが女性四人グループというのもなかなか皮肉。
新しき魔法少女<第二次魔女っ子シリーズ>
おジャ魔女どれみからプリキュアまで、現在も続くシリーズ。特徴は大掛かりなメディアミックスと「大きなお友だち」向けに整えられているキャラデザ。32時の深夜アニメとも言われる。まあ「萌え」と「ヲタク」の一般化が始まっている所以は慣れ親しんだ日曜朝を見た世代の成長と言えるかもしれない。「プリキュア」と魔法らしきものを使う上でも要素を限定しはじめて、平成を感じさせる。
バトルする魔法少女<魔法少女リリカルなのはシリーズ>
魔法少女のアンチテーゼの代表といえばこの作品。一度見てほしいとしか言えない。できれば新劇場版ではなくアニメを。
拳で分かりあうのがこの作品のモットーなので、戦闘の作画と描写が神がかっている。「何手先までの攻防を読んで戦う」というのをアニメで見せられたのはこれが最初で最後だと思う。
可愛い女の子がガチすぎる戦闘をする、魔法少女のくせに無駄に熱い、友情の物語と魔法少女をバックグランドにおいた少年アニメである。あと1期は暗いし重い。これは後述するまどかマギカの監督である新房が1期の監督を務めているからだと思われる。元はエロゲ。
魔法少女は世界を救う<魔法少女まどか☆マギカ>
魔法少女のアンチテーゼ第二弾。清純、可憐、無垢のイメージをもった魔法少女を絶望から描くシャフトのオリジナルアニメ。セカイ系と魔法少女の融合。
放送3話で「マミった」のがネットで話題となり爆上げされた。
私は一話当時友人に「このアニメ絶対面白くなるから見て!」と爆押ししていたのだが「魔法少女ww」と馬鹿にされ相手にしてもらえなかった。その結果この作品がわけもなく苦手である。というかこの作品にわけもなく群がる奴らが大嫌いである。3話までのまどマギ実況は過疎ではなかったが盛り上がっているとは言えない状況であり、熱い手のひら返しに人間の醜さを思い知った。内容はとても面白い。エヴァの踏襲がそこかしこにあるので見てると少しクスッとしたりもする。
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魔法少女の亜種<撲殺天使ドクロちゃん他>
時代を少し戻して、撲殺天使ドクロちゃん。たしか2006年ごろだと思うんだが、どうだったろうか。亜種といいつつ、このドタバタコメディは「魔法少女サリーを平成に蘇らせるとこうなる」という感じで一周回って納得してしまう。ほかにもこういう系統のものはかなりある。
魔法少女の苦悩<西の魔女が死んだ>
書籍まで広げると、西の魔女が死んだは私の心を掴んで離さない。いまでもなにかに嫌になったらこれを読む。
ただ単に頑張る女の子ではないのがこの話の魅力で、それがとっても心地いい。疲れた時は映画を、人生がわからなくなったら本を読むことを勧める。どちらがどうとか、そういう野暮なことは無しにしよう。
ジブリの女の子<魔女の宅急便>
ジブリ作品はだいたい女の子が頑張っており、女の子の鋭敏な感受性と弛まぬ”豊かさ”は男性にはないものなので、男性より女性を描きたくなるのは当然だと思う。
ジブリでは現代的欲を求めない無垢な女の子を描く節が多いが、その裏で、「自分の足で立っている女性」もきちんと描かれていることに気がつくだろうか。もののけ姫のエボシ、風の谷のナウシカのクシャナは明らかに同一のdispostionを持っており、魔女の宅急便のおソノと千と千尋の銭婆などにも同じことが言える。
魔法少女はいつからか憧れから願望へと変化した。のんきに箒にまたがったあの頃と違い、私たちは煩雑な日々を潤いなく過ごす。魔法少女はそうした願いを叶える為、少しづつ体系を崩して、感動や健気さといった場所からのアプローチを増やした。おそらく日本では魔法少女も頭打ちだろう。だからこそ、次にどんな魔法少女がでてくるのか期待もしてしまうのだけど。