前日談:オバケ退治

 

 

 朝、ぐちゃぐちゃに散らかった部屋を抜けるとキッチンがある。いつも通り。空腹に負けて目覚めたり、そして周りの状況をみて落ち込んだり。散らかったゴミたちが言うのだ。「私を掃除して」「私だってもっときれいでありたかった」「片付けるぐらいできるでしょあなたにだって」

   オバケみたいだ。私は思う。なんだか、この部屋にオバケが住みついたみたい。

 

 キッチンには大窓が一つだけあって、使いもしない食器だとか、木曜捨てられなかったペッドボトルとかを照らす。ナイーブだ。ナイーブなんだろう……ナイーブといってよろしいでしょうか? 私はどんどん控えめになる。もっとナイーブな人たちがオバケになって私に取り付いたら、もう部屋はいっぱいいっぱいだろうし。

 

 今日のオバケはとびきり優しかった。うず高く積まれた雑誌と無駄な紙の山から私の所へ、ひとひらひらりとチラシが落ちた。「ハリーポッター全巻セット2000円」午前の授業とか用事とか、全部すっぽかして買いに行った。本を持って家に帰るともう15時すぎである。それから掃除をした。本が言った。「私はこんな環境で読まれたくはない」
ザツガミ、ビールの缶、チラシ。ごみ捨て場に捨てられたオバケたちはもう何にも言わなくて、冬の木枯らしに自然と背筋が伸びる自分がいるだけである。

 

okinakya.hatenadiary.jp