読んだものを伝える たとえばあなたに(12月前半)

最近はたくさん本を読んだので、まとめてみます。寸評とか得意じゃなくて、なにを書いていいのかわからなくなるんですが、なんとかかんとかやってみます。そういえば読んでいない…!といったものが多いので、あんまり新しいものはないです。ごめんね。

 


これからの正義の話をしよう  マイケル・サンデル

そういえば読んだことがないなとふと思い立ち、そういう実践的哲学書らしきものに今まで手をつけていないこともあり、読んだ。意外なほど読みやすく、わかりやすい内容だった。もうすこし手強いのを想像していたので、ありがたい。これぐらいが気楽に読めて(と言う言い方はよくないが)助かった。とはいいつつ、結論や考えさせることに関してはとても求めてくるので、ぼうっとはしていられず、流石のベストセラーでした。しっかり章ごとに読めるのも好き。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

 

 

 

カラマーゾフの兄弟 上  ドストエフスキー原卓也

こちらも意外なほどスラスラと読めた。中が旅行鞄の中に葬り去られていて、最近ようやっと見つけたので、しばらくほったらかしにしている。内容は覚えているしそのうち読もう。すこし腰が重いけれど。読んだのはこの表紙ではなくて、全体的に青みがかったやつです。 

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

 

 

 

 


恥辱  J.Mクッツェー  訳 鴻巣友季子

 面白かった。基本的に僕はこういう作品に傾倒しないけれど、文学的価値(というものが仮にあるとして)がとても高いのは読んでいてとてもとても理解できた。興味がないのに、読んでしまった。というのが正しいかもしれない。けれどごちゃごちゃしていなくてよかった。あまりに上手に、そして最低限に心象描写がされているので、あまり自分に馴染みがない瞬間でも、「たしかに」と深く首肯してしまう。

恥辱

恥辱

 

 

 

 


このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年 J.D サリンジャー 訳 金原端人

サリンジャーの短編集。ライ麦ホールデンやグラース家シーモアの後日談や前日談。かなりきつい批評も見受けられるが、あいかわらずお美しくいらっしゃる、と喜び、物語後半には深く悲しんだ。ああ、短編の体をなしているけど、大体の物語はつながっているので、長い作品ともとれなくはない。だいたいのサリンジャーの作品を読んでいないとわからない部分も多くあるから、それだけは注意。彼に見せられた人なら、やはり読んでよいものだと思うよ。

 

 

 

 


蹴りたい背中 綿矢りさ

何度か読んだことがあるけれど、今読むとどうなるんだろうと思って読んだ。端正な文章で絶妙な開きかた、という表現がよく表していると思う。深く感じ入ることはなかったけれど、成熟されていない思春期が成熟されている文章で表されるのはやっぱり稀なので、すごいことをしているな、と思う。

蹴りたい背中

蹴りたい背中

 

 

 

 


蛇にピアス 金原ひとみ

こちらも同じ理由から。僕はわりと突っ走る小説を読みたいと思わないので、蹴りたい背中のほうが単純な好みではあるのだけど(同じ時代に生まれたからって比べたりしてごめんなさい すこしだけ許して)、こちらも読むとやはり理性で語りきれないものがあった。ひりつく…という村上龍の表現がピッタリだと思う。いまあらためてページをめくったら、ぐらついてしまった。そういうやつ。

 

蛇にピアス

蛇にピアス

 

 

 

 

 


二十歳の原点 高野悦子

いま気がついたが、この時期僕は若い人のものを読みたかったんだろう。自殺してしまうというバイアスのせいか、最後の韻文詩は素晴らしく思えた。あっけなく終わってしまったし、詩にある種の力強ささえ感じていたので、絶望の淵の自殺、無気力ゆえの自殺とはやはり一線を画している気がしてしまう。とにかく、すべてのものに振り回されていた。沈黙は金!という言葉がよく出てくるが、よくわからなかった。あなたがいまやりたいことは沈黙とは程遠い感情でしょう?と問うてみたかった。

二十歳の原点 (新潮文庫)

二十歳の原点 (新潮文庫)

 

 

 

 

 


カポーティとの対話 ローレンス・グローベル 訳 川本三郎

高校の図書室にあったのをこの間母校に寄ったときに発見した。あんまり語りたくない。悔しいから、僕以外の人間に読まないでほしい。 

カポーティとの対話

カポーティとの対話

 

 

 

 

 


マチネの終わりに 平井啓一郎

とてもよかった。映画化するらしいが、200%ぐらいの確率でうまくいかないか、とても奇妙な省かれ方をするだろうなと思う。仕方ないけどね。作者はどちらかというと本題より、さまざまな副題に目を向けて書いているだろうなと思われる節が多々あり、それがアクセントになっていて、作品をよりらしくしていた。表紙も素晴らしくて、よいものを発見したと思う。ラストにかけては読むのも戦いで、カフェで一人姿勢を正して読んでいた。

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

 

 

 

 


いつか記憶からこぼれおちるとしても 江國香織

あまり好きではなかった。僕は江國香織さん本人に恋をしている節があるので「こんな人をあなたが書かなくても…」と絶望してしまった。絶望したあとに『雨はコーラが飲めない』を再度読んで、やはり恋をした。いたずらな女性だと思う。

いつか記憶からこぼれおちるとしても

いつか記憶からこぼれおちるとしても

 
雨はコーラがのめない (新潮文庫)

雨はコーラがのめない (新潮文庫)