クリスマスの独白②


平坦な文章と写真その他煌びやかなものがあまりないことをお許しください。
ええと、どこまではなしたんだっけ。そうそう、遠藤周作トークで終わったんだった。
これは12月25日昼からのお話。

 


昼、今日が帰省だと気がついた。遅すぎる。
キリストの誕生を持っていくのは当然として、機内で読むものがなかった。ぼく程度の知識だと、手元に参考資料がないと読めないのだ。

福音書とその他もろもろをかき回しつつ文を追うことは、飛行機の中ではできそうになかった。ファッションのごとく扱うぼくは、かなりナニカにとって辛口採点だろうな、とぼんやり思った。

でもファッションは生き方の一つでしょう、宗教も本質的なところで生き方じゃない?もう一人のぼくが言った。いやいや、論点ずらすな。そんな感じ。言い方がキツくてゴメンなさい、『ぼくにとっては』ある種のファッション性だろうと感じているだけです。宗教を否定するつもりも卑下するつもりもぼくにはありません。要約すると、ぼくはゴミの中のゴミってことです。

 


仕方がないので、支度ついでに本屋によって本を探すことにした、手軽なものがいい。その上、向こうは雪らしかったから、センチメンタルな気持ちに浸れる一冊を。さんざ迷った挙句に江國香織を一冊買った。面白かった。


支度も大したなかった。大学生は身軽だ。少しの着替えと、遊び道具と。

電車に乗ってモノレールに乗って、ぼくは空港についた。他にもたくさん行き方はあるんだろうけど、未だにこの行き方しかしらない。

 


ぼくにとっては今日の東京は秋晴れで、空港も9月のテンションで歩いた。でもすぐに飽きて、用事もないし、食事を済ませて出発ロビーに向かった。食事はラーメンだった。なぜ空港で、しかも札幌に向かう前にラーメンなんだ。自分で突っ込んだけど、美味しかった。「こんなところでラーメンかよ」とかいうこんな夜更けにバナナかよのオマージュを思いついて一人で笑っていた。

 

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機内に入ると、美女たちがにっこりスマイルで待ち構えていた。いつもご苦労様です。言葉には出さずに席に座った。

 


満月。飛行機が地面を離れる5分前にぼくは気づいた。窓側の席でよかった。年柄にもなく、ぼくは窓の外の満月をずっと見ていた。江國香織を読む暇もないくらいずっと。
離陸してからもしばらく、雲の切れ間に月が隠れるまで、窓から景色を覗いていた。今日はクリスマスで満月なんだから、一年で一番眩しい夜を僕は見ているのかもしれないと嬉しくなった。平面になった地上で、こんなに距離があってもまだ分かるほどイルミネーションが灯っていた。

 

 

「一年で一番眩しい夜」というワードにもうニヤけてしまって楽しくなってる僕の横で、おばさんが、いやババアがガサガサやりはじめ、マックのハンバーガーを食べだした。現代的で整頓された匂いのする飛行機が、あっという間に生き物と甘い添加物の乱雑な匂いに変わった。正直、イライラした。

 


こういうときに、決まって「人間はわからない部分で他人に迷惑かけてんだろうなあ」と自らを反省する。でもよく考えなくてもイライラさせられているのは僕で、ハンバーガー(しかもかなりの匂いだ)をむしゃむしゃ食ってる隣がいる時にまで反省しなくてもいい気がする。たとえ法的になにも問題なく正当な食事という名目でも。あんまりだろ、と感傷的なものはどこかに飛んでしまった。ついさっきまで頭の中で鬼束ちひろの月光が流れていたのに、きゃりーのさいごのアイスクリームが割って入ってきた、最悪。

 

 

 

札幌に着いたらアホみたいに寒かった。

 

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雪は止んだ直後で、路面状況に注意な雰囲気だった。
観光客がコケてた。2年前、即ち僕が受験生だった頃、滑るのに大変気を使っていたことが頭をよぎった。いまは余裕を持って転べると思うと楽しくなった。歩いて家まで帰った。家路の途中で、靴で車道を滑ったりしながら。

 

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こんなことを友達に語って、お前は変だ、とまた言われた。いや、変かな。いまでもソリとか乗りたいんだけど、変なのかな。