春休み読書感想文 ブリキの太鼓
ブリキの太鼓、ギュンター・グラスと聞いてどれだけの人が読んでいるのでしょうか、映画だと一定数いるのかもしれませんね。
日本人にはなんとなく馴染みの薄い作家の気がします。ノーベル文学賞なんです、一応。
ダンツィヒ三部作のひとつであり、物語には政治的、民族的要素が含まれます。ちゃんと読みこなすのは簡単ではありません。島国である私たちにとって、この状況は想像できないです。
作者境遇そのままが主人公に照らされており、リアルな体験という、ある種徹底的な取材のもとに書かれた作品としての見方もできるのでしょう。
いままでぼくがオススメしてきたティファニーやキャッチャーと目指すは全く同じ場所ながら、アプローチは違います。
主人公は生まれた時から完璧な思考をする奇人、彼は大人になることによる責任を放棄するため、3歳で成長を止めます。体はいつまでたっても3歳のまま、周りには障害者のレッテルを貼られていますが、本人の思考ははっきりとしているのです。彼はお気に入りの太鼓を叩き、毎日を過ごします。
背の低い視点、それにしてはあまりに知的な切り口から
太鼓や歌声、不思議な出来事とともに
大人になんかなりたくない
いろんなところからのプレッシャーが、この物語には溢れています。
ぼくは決してこの本が好きではない。削り取って物語にするのではなく、継ぎ足して物語とする彼の作風はどうしても合わないし、美しくない。
けれど、現実はいつだって多意的です。たくさんの出来事があって、ひとつの感情が生まれたりします。
人生で一度だけ、手に取ってほしい。